中学1年生の時に卓球を始め、デフリンピック出場を目標に高校は卓球の強豪校に進学した山田瑞恵さん。高校3年生で出場したソフィア2013デフリンピック競技大会から3大会連続出場を果たした他、国内外の大会で優秀な成績を収めています。東京2025デフリンピックに向けて日々練習に励む山田さんは、今、どんな思いで競技に打ち込んでいるのでしょうか。
卓球を始めたのは中学校に入ってからだそうですね。どんなきっかけがあったのでしょうか。
「幼い頃からダンスと水泳をやっていて、中学校でも続けるつもりでいたのですが、学校にはダンス部も水泳部もなくて…。スポーツは何かしらやりたいと思っていたので、母と姉が卓球をやっていたことから、軽い気持ちで卓球部に入部しました。
フォアドライブで思い切りボールを打つ先輩のまねをして、自分も思い切りラケットを振ってみるとこれがなかなか爽快で。テンポよく積極的に攻めるプレーは、せっかちな自分の性分に合っていると思いました。」
卓球という競技の魅力は、どんなところに感じますか。
「なんといってもラリーの速さなど、スピード感ですよね。試合では、一つのプレーで流れが一気に変わるので、一瞬たりとも気が抜けません。どのスポーツにも共通することですが、集中力と、最後まで諦めない心の強さが問われる競技だと思います。」
ダブルスとなると、また違った魅力がありそうですね。
「ダブルスで大切なのは、ペアを組むパートナーとの信頼関係。自分はここが苦手、ここが得意というところをしっかりと伝え合い、お互いを理解し合うことから全てが始まります。試合で、たとえパートナーがミスしたとしても、『大丈夫!大丈夫!』と励まし合う。一人で戦っているのではないという心強さを感じるのもダブルスの魅力です。」
勝つために、試合中はどんなことを心掛けているのでしょうか。
「どんなに窮地に追い込まれても笑顔でいることを心掛けています。以前の私は、ミスをすると、下を向いてしまう癖があったんです。そうするとプレーも硬くなってしまい、気持ちまでピリついて悪循環になりがちで。何か良い方法はないかと考えている時に、早田ひなさんがあえて笑顔を意識されているのを知り、自分もまねをするようになりました。試合に入る時や窮地に追い込まれた時など、あえて笑顔になると、気持ちがフッと楽になり、不思議とボールも狙ったところに入るようになりました。」
山田さんは、ソフィア2013デフリンピックから3大会連続でデフリンピックに出場されています。これまで出場された大会で特に印象に残っていることを教えてください。
「初めて参加したソフィア2013デフリンピックで、上田萌さんが女子シングルスで金メダルを手にした瞬間を見た時のことは、今も強く印象に残っています。普段は気さくな萌さんが、試合前ともなると、周りとはほとんど会話せずに完全に自分の世界に入っている。とても話し掛けられるような雰囲気ではなく、デフリンピックで優勝することの重圧がひしひしと伝わってきました。決勝の相手はロシアの選手。いざ試合が始まると、萌さんの攻めるプレーが、相手には通用しなくて。すると、すぐに攻撃スタイルを変えて守りに徹し、ひたすら耐える試合展開になったんです。結果は、4対1で勝って念願の初優勝。自分の得意とするプレーを封印されても粘って、耐えて、勝利を手にする姿に感動すると同時に、世界の頂点に立つ厳しさも思い知りました。」
先輩の活躍に刺激を受け、ご自身も世界の舞台で活躍されているのですね。
「海外の選手はパワーもありますし、ボールの回転もすごいので、それを上回る技術の高さが求められます。中国やウクライナ、インドといった強豪国がひしめく中で、サムスン2017デフリンピック競技大会、ブラジル2021デフリンピック競技大会ともにダブルスで銅メダルを獲得できたのは、やはり先輩たちから学んだことがとても大きかったから。高くて厚い、世界の壁を自分も崩してみたいという気持ちが、積極的に攻めるという自分らしいプレーにつながっているように感じます。」
いよいよ今年は、東京でデフリンピックが開催されます。山田さんの活躍にも期待が懸かります。
「今の私にできることは、自分の限界に挑戦し、これまで支えてくれた方々や応援してくださる方々に感謝の気持ちを抱きながら、自分らしいプレーを最高の状態でお見せすること。特にシングルスでは、まだ取ったことのないメダルを手にしたいです。目標はもちろん、金メダルです!」
デフリンピックを初めて知る人も多いと思います。観戦をより楽しめる見どころなどを教えてください。
「デフリンピックというと、『静かな大会?』と思われがちですが、ガッツポーズや気迫あるプレーも多く、試合中の熱気はかなりのものがあります。卓球の場合、ルールは健常者の場合と全く同じです。ただ、ボールのスピードや回転を音で判断できないため、視覚に頼る技術や戦術がとても重要になります。観戦する際には、選手の目の動きや集中力の保ち方も見どころになります。」
観戦する際、応援はどのようにすればよいのでしょうか。
「拍手でも、声援でも、なんでも大丈夫です。音がきこえなくても、皆さんの表情や口の動き、手の動きを見ているだけで応援してくれていることは十分に分かります。私が印象に残っているのは、サムスン2017デフリンピックでのこと。他の競技の選手の皆さんが、スティックバルーンを持って卓球の応援に来てくれたんです。ポイントが決まるたびにみんながバルーンをたたいて喜んでいるのが見えて。音はきこえなくても、空気の振動が伝わり、一気にテンションが上がりました。東京では、より多くの声援があると思うと今から楽しみです。皆さんの応援がパワーとなりますので、よろしくお願いします!」
デフアスリートの皆さんの活躍に、多くの人が刺激を受けそうですね。
「私と同じように聴覚障がいのある方にもぜひ、デフリンピックを観戦してもらい、デフスポーツの魅力に触れてもらいたいです。私自身、最初は卓球が大好きというわけではなかったんです。けれど、デフ卓球を通していろんな方に出会い、いろんな経験ができ、こうして自分らしさをスポーツで表現しながら、世界で戦えるようになりました。今では、卓球をやってよかったと心から思います。こうした経験を、多くの人にしてもらえたらなと思います。」
東京2025デフリンピックには世界各地から多くの方が観戦にいらっしゃいます。観戦と併せて楽しめる東京のおすすめスポットがあれば、ぜひ、教えてください。
「豊洲市場に隣接する『豊洲 千客万来』は、新鮮な魚介を使った寿司や海鮮丼を気軽に楽しめます。市場を見学した後に、おいしい海の幸をおなかいっぱい食べてもらいたいです。そして、私が大好きな『もんじゃ焼き』もぜひ、体験してほしいです。月島には数十軒もの、もんじゃ焼き屋さんがあって、どこに入ってもおいしいもんじゃを食べることができます。私のおすすめトッピングは明太子とチーズ。仲間とワイワイ盛り上がりながら、鉄板の上でもんじゃをつつきながら飲むお酒は最高においしいです。東京のB級グルメもぜひ、お楽しみください。」
YAMADA Mizue
1995年生まれ、埼玉県出身。先天性難聴を抱えながらも普通学校に通い、中学1年生で卓球を始める。卓球強豪校の秋草学園高校に進学し、3年時に初めて出場したソフィア2013デフリンピック競技大会では団体で銅メダルを獲得。サムスン2017デフリンピック競技大会ではダブルス、団体ともに銅メダル、ブラジル2021デフリンピック競技大会ではダブルス銅メダル、団体で銀メダルを獲得。2025年11月に東京で開催される東京2025デフリンピック競技大会の日本代表に内定。SMBC日興証券株式会社所属。