11/24/2023

自分たちの活躍でスケートボードが浸透していくのがうれしい
-中山楓奈さん

初採用のオリンピックで銅メダリストに

今回、話を伺ったのは、第 32 回オリンピック競技大会(2020/東京)の新競技として注目されたスケートボード・女子ストリートで銅メダルを獲得した中山楓奈さん。Street Skateboarding Rome 2022では国際大会初優勝を果たし、第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)での活躍にも期待がかかる中山さんにスケートボードの魅力や今後の目標などを語っていただきました。また、中山さんによる、東京おすすめスポットもご紹介します。

技に挑戦する過程が楽しくて

中山さんがスケートボードを始めたのは、どんなことがきっかけだったのでしょうか。

「小学3年生のときに、地元の富山県にスケートパークができ、父親に連れて行ってもらったのが最初でした。昔、スケートボードをやっていたという父に教えてもらいながら、初めてボードに乗った感覚がとにかく楽しくて。もちろん、最初から滑ることなんてできません。まずはボードに乗って、そこから少しずつ滑れるようになって…と、できないことに挑戦していくこと自体を楽しんでいた記憶があります。」

今では次々に大技をこなしていく中山さんですが、最初に習得したのはどんな技だったのでしょう。

「デッキと一緒に自分も飛ぶOllie(オーリー)という技です。遊ぶ感覚でやり始めて、だんだんと高く飛べるように、ボードと足ができるだけ離れないように、と少しずつ練習を重ねていきました。結果的に1年ぐらいかかったのですが、このオーリーができるようになったくらいから大会に出るようになり、いろんな技にもトライするようになりました。」

オリンピックを機にブーム到来

第 32 回オリンピック競技大会(2020/東京)は、ご自身にとっても、そしてスケートボード競技にとっても初のオリンピックでした。あらためて大会の感想をお聞かせください。

「まず、パークを見た瞬間にセクションがどれも大きく高さもあるだけに、なかなか厳しそうだなと思いました。例えば、十数段ある階段にレールもついて、男子でもきつそう。女子でこのセクションに入れる人はいるのかなと。特にメインレールは、これまで見てきた海外のパークと比較しても難易度はかなり高め。挑戦のしがいがあるからこそ、事前練習は集中して行えました。」

結果、ボードの前車輪をレールにかけて滑らせる大技、フロントサイドKグラインドに成功し、初の銅メダリストとなりました。

「表彰台に上がれたことは本当に光栄でした。とはいっても、試合の直後は、オリンピックでメダルを取ることのすごさをきちんと理解はできてなかったんです。メダルの重みを実感したのは、実家のある富山に帰ってから。地元の方たちにたくさん声をかけていただいて。皆さんが喜んでいる姿を見て、頑張ってよかったなとしみじみ思いました。」

中山さんはじめ、選手の皆さんの活躍によって、一気にスケートボードブームに火がつきました。

「全国のさまざまな場所にスケートボードパークができ、スケートボードを始める子どもたちが増えたというのは、本当にうれしいです。オリンピック前のパークといえば、平日はほぼ貸し切り状態。土日でも滑っているのは数人のみ、といった状況でした。それが今では、平日でもにぎわっていて、子どもたちのボーダーもとても多い。私が監修し、今年の8月に完成した富山市内のNiX Urban Skate Park (ニックスアーバンスケートパーク)は駅前にあるので、子どもたちも学校帰りに通うことができます。週末には県外から滑りに来てくださる方もいて、地方でもスケートボードが浸透していることがよく分かります。」

目指すは来年に迫ったパリオリンピック

スケートボードを続けてきて、よかったと思うことはどんなことでしょう。

「一番は、言葉が通じなくても、スケートボードをしているだけでいろいろな国の人たちと仲良くなって、友達がどんどんできることですね。オリンピックでの様子をご覧になった方々からもよく言われるのですが、選手同士とても仲がいいんです。お互いのインスタグラムをフォローし合って、投稿された内容で盛り上がったり。技について聞いたり、聞かれたりすることも普通にあります。自分から聞くとしたら、例えば、感覚重視タイプの選手には気持ちの上げ方といったメンタル面の話だったり、緻密に考えるタイプの選手には目線の置き方や肩の開き方など、具体的に教えてもらうことも多いです。ライバルというより、お互いにスケートボードが好きでうまくなりたいって思い合っているもの同士という感覚なんですよね。」

選手が互いに高め合い、その先に目指すのはやはり次のオリンピックでしょうか。

「そうですね。オリンピック予選でしっかりと結果を残して、第33回オリンピック競技大会(2024/パリ)に出場することが今の目標です。」

スポーツに買い物に幅広く行動できる街

富山県で高校生活を送りながらスケートボード選手として活躍している中山さんですが、イベントなどで東京に足を運ぶことも多いとか。東京の魅力はどんなところにあると感じますか?

「東京は、交通のアクセスがとてもいいですよね。数分おきに電車が来るので、観光地など、行きたいところにすぐに行けるのでとても動きやすいです。先日、原宿でショッピングを楽しんだのですが、すぐ近くに明治神宮があって、歩いてお参りに行きました。原宿から数分で行ける場所なのに、とても静かで、空気感がまったく違うのにも驚きました。同じエリアでも買い物を楽しんだり、神社仏閣にお参りしたりなど、行動の幅が広がるのも東京の魅力だと思います。」

 東京でよく足を運ぶ場所などはありますか?

「私はアニメが大好きで、渋谷にある『ONE PIECE 麦わらストア 渋谷本店』や東京駅構内にある『JUMP SHOP東京駅店』によく行きます。東京駅は、お土産に買っていくと必ず喜ばれる『東京ばな奈』も売っているので、自分のお気に入りのスポットでもあるんです。」

都内にはスケートボードパークもたくさんありますが、中山さんがおすすめするパークがあればぜひ教えてください。

「今年の夏に立川市に誕生した『ムラサキパーク立川立飛』は屋外だけではなく、室内のスケートパークもあるのでおすすめです。室内パークは956.25㎡あって、冷房も完備。海外から来た選手と一緒に行ったら、かなり喜ばれると思います。屋外スケートパークには、世界大会で使われているものと同等の高さのバーチカルランプが設置されているほか、初心者でも安心して滑れるフラットスペースもあり、スケートボードを始めたばかりの方からプロ級の方まで、幅広く楽しめる場所です。ぜひ、足を運んでスケートボードを楽しんでみてください。」

<プロフィール>
中山楓奈
NAKAYAMA Funa
2005年、富山県出身。9歳で本格的にスケートボードを始める。2021年6月に開催されたストリート世界選手権大会2021 ROMEで6位に輝き、オリンピック日本代表に選出。第32回オリンピック競技大会(2020/東京)では、予選を全体1位で通過し、銅メダルを獲得。2022年7月に行われたStreet Skateboarding Rome 2022では国際大会で初優勝を果たす。11月にはアジア人女性として初めてスケートボード専門誌「THRASHER MAGAZINE」の表紙に選ばれるなど、世界からも注目を集めるトップスケーター。