およそ9メートル四方のエリアでボールを落とすことなく、3回以内で相手コートに返球しあうバレーボール。みんなでひとつのボールをつないでいくチームスポーツとして老若男女問わず人気の競技です。そのバレーボールの日本代表として過去、オリンピック2大会に出場した経験をもつのが迫田さおりさん。競技者として感じてきたバレーボールの魅力のほか、東京という街の楽しみ方を伺いました。
迫田さんがバレーボールをはじめたのは小学3年生のとき。
「2歳上の姉がスポーツ少年団でバレーボールをしていたんです。チームメイトと和気藹々と練習をする姉の姿に憧れて、自分も入団しました。本格的にバレーボールを習い始めて最初にくじけそうになるのは、レシーブのときの痛さ。でも、『このボールを落としてはならない!』と思うと次第に痛さも感じなくなるんです。際どいボールを追いかけて拾って、みんなでつなげあって、相手のコートに返す。私の場合、誰かと競い合うよりは、仲間と一緒に何かをするという行為にバレーボールの魅力を感じていました」
中学、高校とバレーボール部に所属し、国体の選抜メンバーにも選ばれた迫田さん。その活躍ぶりは実業団の目にとまり、高校卒業と同時に東レアローズに入部。
「学生時代とは打って変わり、そこは全国の強豪校から選りすぐられた一流の選手たちの集まり。驚いたのは選手たちだけではなく、スタッフ陣の質の高さでした。選手の技術や身体、メンタルのサポートはもちろん、相手チームのデータ分析などあらゆる角度でチームを支えてくれる。また、実業団に入ってからは、チームを応援してくださる観客の皆さんの存在も大きく感じました。支えてくれる人のためにも活躍したい。そう思えたことが私のバレー人生の支えとなっていました」
迫田さんは2012年のロンドン大会、16年のリオ大会と二大会連続でオリンピックに出場。ロンドン大会では、アタッカーとして銅メダルに大きく貢献しました。
「韓国との3位決定戦では、同期の石田瑞穂さんのユニフォームを下に着て試合に臨みました。彼女は日本代表の12名には選ばれなかったにも関わらず、一緒にロンドン入りし、ずっとチームのサポートをしてくれていたんです。試合の前に帰国した彼女が残していったユニフォームは私にとってはお守りのようなもの。絶対に、勝てる!という自信が湧いて、得意のバックアタックを決めることができました。支えてくれる人の期待に応えることが自分の役目。そうした使命を感じながら、チーム一丸となって挑み、見事手にすることができたメダルは大切な宝物です」
コート上の一体感は観戦している側にも伝わってきます。
「どちらのチームもボールを落とさずにラリーが続くなど、必死にくらいつく選手たちのプレーには感動しますよね。一方、高さのあるダイナミックなスパイクは見ていてスカッとする。観戦する立場からすると、バレーの魅力は最後の25点目を迎えるまで、どちらが勝つのか予測がつかないところにもあります。押され気味だったチームがあきらめずにボールを拾った一人のワンプレイで流れを一気に変えるというのはよくあること。最後の最後まで目が離せない試合展開に私もいつも興奮します」
オリンピアンとしての経験を持つ迫田さんは、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)ではコメンテーターとして大会に関わっていました。
「私が経験してきた試合は、観客の皆さんの応援で盛り上がるのがふつう。ところが、今回の大会では、無観客という異例の状況。そのなかにありながらも、全力で挑む選手たちの姿には何度も胸を打たれました。仲間たちや自分たちを支えてくれている人たちに報いたい。会場での選手たちの戦いぶりやインタビューからは、その思いがひしひしと伝わってきました」
また、バレーボール以外の競技を観たり、選手の皆さんと関われたことも自身にとっては貴重な経験にもなったそう。
「例えば、今大会から正式種目として新たに採用された3×3(スリー・エックス・スリー)バスケットボール競技。同じ球技でありながら、バレーボールとはまったく違う身体の使い方も興味深かったです。何より、攻守が目まぐるしく変わるなかでチーム内の息の合ったプレーが次々に起こるなど、興奮の連続。こまやかなステップやパス回し、シュートなどの技術、息つく暇もないほどに動き回る体力、気持ちを素早く切り替える精神力を目の当たりにし、日々いかに努力を積み重ねているかを感じながら見入りました。こうした新種目を知れるのもオリンピックの魅力ですよね」
ふだんは出身地でもある鹿児島での活動が多いという迫田さん。東京に来たときはどんな楽しみ方をしているのでしょうか。
「いろんな建物を見ながら歩くのが好きです。大都会ならではの近代的なビルを見るのも楽しいですし、神社仏閣や東京駅のレンガ造りの駅舎など一昔前に建てられた建築物も趣があっていいですよね。なかでも、都会のど真ん中に聳え立つ東京タワーは遠くから見ても近くで見ても好き。堂々としたその存在感は日本の首都、東京を象徴しているように思います」
一方、バレーボールを気軽に楽しめる施設が増えた点にも注目しているそう。
「バレーボールは屋内で行われるスポーツなのですが、最近では屋外で楽しめるビーチバレーも人気ですよね。東京都内でも、品川駅からも近い大森水辺スポーツ広場にビーチバレーコートが常設されたほか、渋谷駅からすぐのMIYASHITA PARKの屋上やお台場海浜公園など観光やショッピングも楽しめるスポットでバレーを楽しめる場所が増えました。多くの皆さんに東京の魅力を楽しみつつ、バレーにも親しんでもらえたら嬉しいですね」
<プロフィール>
SAKODA Saori
1987年、鹿児島市出身。小学3年でバレーボールを始め、高校卒業後の2006年にVリーグの東レアローズに入団。10年日本代表入り。バックアタックを武器に数多くの世界大会で活躍。12年のロンドンオリンピックでは銅メダル獲得に大きく貢献。16年リオデジャネイロ大会と2大会連続出場を果たす。17年に現役を引退。現在はバレーボール主要大会の解説を始め、テレビやイベント出演、バレーボール教室を行うなど幅広く活動中。