IOC(国際オリンピック委員会)が、史上初となる「Olympic Esports Games」を2027年にサウジアラビアの首都リヤドで開催すると発表するなど、世界中でeスポーツが注目を集めています。そこで、今回はJeSU公認プロライセンスを持ち、東京ヴェルディeスポーツチームに所属する、ともくん選手にインタビュー。得意競技のぷよぷよを通じて感じるeスポーツの魅力や今後の展望などを伺いました。
※eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。
ともくん選手がeスポーツを始めたのは小学2年生の時だそうですね。きっかけはどんなことだったのでしょうか。
「元々母親がゲーム好きで、せっかくなら家族みんなで遊ぼうと、やり始めたのが最初です。わが家は両親と長男の僕、弟が1人、妹が2人の6人家族。幼い弟や妹たちも簡単に操作できて楽しめるゲームが『ぷよぷよ』でした。ぷよぷよとは、『ぷよ』と呼ばれるキャラクターを題材にした落ち物ゲームで、キャラクターもかわいいし、操作もルールもシンプル。弟や妹たちも一緒に、家族でワイワイと盛り上がるのにぴったりでした。」
ともくん選手自身は、ぷよぷよのどんなところに面白さを感じたのでしょうか。
「ぷよを連続して消す、“連鎖”が決まった時の爽快感がやみつきになりました。大連鎖を目指して練習するうちにどんどん上達するのもうれしくて。気付いたら、両親よりもうまくなり、コンピューターの一番強い相手にも勝てるようになっていました。」
最初の大会に出たのは、小学5年生の時だそうですね。
「近所のショッピングモールで開催された大会でした。結果は4位。いつもはコントローラーを使っていたのですが、大会では慣れないレバー操作ということもあり、普段通りにできなかったことが悔しくて。それでも、上位に行けたことで自信になり、そこからは、大会を意識して練習し、上を目指したいという気持ちがより強くなりました。」
大会となると、相手も強いでしょうし、より緊迫感が増しますよね。
「いつもやっているオンライン対戦は2本先取がルールだったのですが、大きな大会になると、30本の連戦で、1試合1時間ほどかかります。長時間になればなるほど、集中力も体力も必要で、初めてリーグ戦に挑んだ時には、それこそ、単なるゲームにとどまらない、競技としての醍醐味を味わいました。」
大会に勝つために、どんな工夫をされているのでしょうか。
「普段から50本連続で対戦するなどして練習を積み、実際の大会では、試合の合間にチョコやラムネを食べることで糖分補給をして、長期戦に挑んでいます。また、同じぷよぷよでも、戦い方や攻略の仕方は人それぞれ。個々のプレイヤーに合わせた対応も想定しながら日々練習を重ね、大会での実践につなげています。」
競技に向き合う姿勢は、アスリートそのものですね。
「確かに、日常的に運動して体力づくりをしているeスポーツ選手も多いですしね。僕は小学生の時はサッカー、中学から高校にかけてはボルダリングをやっていたこともあり、スポーツを通じて培った、試合の組み立て方や体力、集中力、メンタルの強さは、とても役に立っています。」
ともくん選手は、16歳でプロになりましたが、プロになったことで自身にどんな変化がありましたか。
「人から注目され、ファンの皆さんに応援してもらえるようになったのが大きな変化です。自分を目標にしてくれる小学生や子どもたちも多く、そうした下の世代のお手本となるようなプレイヤーでいなければならないという自覚が芽生えました。今は、東京ヴェルディeスポーツチームにも所属していますし、多くの期待に応えるためにも、日々、大会を想定した練習をし、心も体も健康でいなければと思っています。」
小学校低学年から今も続けているぷよぷよという競技の魅力は、どんなところにあるのでしょうか。
「ぷよぷよが発売されたのは1991年ですから、今年で34年。シリーズもたくさん出ていますが、ルールはほとんど変わっていないんです。その一方で、プレイヤーのスキルがどんどん向上して、一人一人にプレイスタイルがあり、戦術もどんどん進化している。だから対戦するのが面白い。僕自身、以前は早いタイミングでマルチ連鎖を仕掛けるなど、とにかく攻めまくるプレイスタイルだったのですが、最近では、より冷静に戦局を見て、相手の攻めに対応しながら戦術を変えるなどしています。大会では、追い詰められてもいかに持ちこたえるか、接戦や乱戦をいかに制するかが大事。自分の伸びしろもまだまだ感じています。」
観戦する側はどんなところに注目すると楽しめるでしょうか。
「まずはスピード感ですね。いかに早くぷよを積み上げて、連鎖を組んでいくかが勝負のカギ。上級者同士の戦いですと、両者、手を止めることなく、ひたすらぷよを回転させ、移動させ、落とし続けます。その間に、相手の動きを読みながら連鎖を崩すタイミングを見極めて、おじゃまぷよによる攻撃や連鎖を使ったカウンターを仕掛けていく。それを瞬時に行うので、プレイヤーの反射神経と戦略性も見どころになります。一瞬たりとも気が抜けない展開は見応えがあります。」
今後の目標や抱負について、お聞かせください。
「来年は、東京eスポーツフェスタ2026が1月に開催される他、第20回アジア競技大会(2026/愛知・名古屋)が32年ぶりに日本で開催されます。このような、より多くの方に注目していただける大会でしっかりとタイトルを取ることを、まずは目指したいです。また、東京ヴェルディeスポーツチームが出場する試合会場でeスポーツの体験コーナーを設けることがあるのですが、そうした場で、皆さんにプレイの面白さを直接伝えるなど、eスポーツの普及にも尽力していきたいと思います。」
eスポーツになじみのない方には、どんなことをアピールしたいですか?
「一番は、年齢や性別、国籍に関係なく、誰でも楽しく遊べることですね。また、ぷよぷよでは、色覚サポート機能があるなど、各ゲームで、障がいがある方も楽しめる工夫がされています。eスポーツには、シューティングゲームやスポーツゲームなど、さまざまなジャンルがあり、国際的に注目度がどんどん高まっています。どなたでも楽しめる競技なので、多くの方に体験していただきたいです。」
都内でeスポーツが楽しめるおすすめのスポットをぜひ、教えてください。
「中野にあるRed Bull Gaming Sphere Tokyoは、広々とした空間で、設備も充実していて、雰囲気もおしゃれ。世界で活躍するプロゲーマーやストリーマーが利用していることもあり、技術交流の場にもなっているんです。さまざまなeスポーツイベントも開催され、自由にプレイやイベントを楽しむことができます。初心者から上級者まで、誰でも楽しめるので、eスポーツに少しでも興味を持ったら、ぜひ、足を運んでみてください。」
TOMOKUN
2002年生まれ、東京都出身。2019年4月に16歳でJeSU公認プロライセンスを取得。以降、全国都道府県対抗eスポーツ選手権4連覇、eスポーツ学生選手権三冠など、数々の大会で優勝を果たし、ぷよぷよ界を牽引し続けるトップ選手として活躍。2022年から東京ヴェルディeスポーツチームに所属。ぷよぷよプロプレイヤーとして、大会出場はもちろんのこと、eスポーツの普及に向けて幅広く活動。