01/26/2023

利便性と多彩さに満ちた都市・東京
-山本博さん

アーチェリーに魅せられ47年。努力は今も継続中

今回、お話を伺うのはオリンピックに過去5回出場し、1984年ロサンゼルス大会で銅メダル、2004年のアテネ大会で銀メダルを獲得したアーチェリー選手の山本 博さん。現在も現役選手として競技を続けながら大学教授として教鞭をとる、東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技委員会顧問会議顧問として大会に関わる。そんな山本さんにアーチェリー競技の魅力や東京の街をより楽しむ方法などを伺いました。

13歳で出会ったアーチェリー競技

山本さんがアーチェリーをはじめたのは中学生のとき。どんなところに興味を持ったのでしょうか。
「もともとスポーツが好きで子どもの頃は野球少年でした。アーチェリーはテレビや雑誌などで見聞きしたことはあったものの、はじめて生で見たのは中学校に入学した直後の部活体験。弓を引き、放たれた矢がどんどんスピードを上げ、遠くの的に突き刺さる。そののスピードは時速200キロを超えると知ったときのワクワク感やひとりで黙々と挑む競技に物珍しさを感じて学校のアーチェリー部に入部を決めました」
中学校3年のときには史上最年少で全日本選手権に出場。その後、高校時代には3年連続でインターハイ個人優勝と10代にして注目の選手に。
「アーチェリーは個人競技なので、自分のやりたいときに納得がいくまで練習できるのがよくてね。時間を忘れてひたすら弓を引いて矢を射る没頭感やシンプルゆえに奥が深い競技内容にどんどんのめり込んでいきました」

心と技を鍛えて臨むプレッシャーとの闘い

アーチェリーを観戦するときには、どんなことに注目すると楽しめるでしょうか。
「アーチェリーはとてもシンプルな競技で、70メートル先にある直径122㎝の標的に向かって矢を放ち、矢が刺さった場所によって得点が決まります。矢のスピードは非常に速いため、目視しているとあっという間。じっくりと見るならテレビなどでアップやスローモーションになった映像を見ると、選手それぞれの技術の精度がどれほどかを把握することができます。一方、試合会場で観戦するならば、一射ごとに集中する選手たちの緊迫感や矢のスピード感を肌で感じとれるのが醍醐味です」
一方、選手にとっては一射ごとに感じるプレッシャーは相当のはず。
「大会では、常にプレッシャーやストレスとの闘いです。それらにどう打ち勝つかがすべて。メンタルコントロールを乗り切って思い通りに的の中央に矢が刺さったときの達成感たるや!逆に、思うようにできず結果が芳しくないときは、情けないし悔しいし。でも、そこで諦めたらおしまい。ひたすら練習を重ね、技術を磨き続けることで自信を身につけ、自分を成長させることが大切なんですよね。私の場合は、練習の他に自分で矢のメンテナンスをすることを習慣にしていて、その時間は道具に触れながら練習の段取りや気持ちの整理をするようにしています。自分といかに向き合うか。心技一体となるアーチェリーはだからこそ、奥が深い。13歳で競技をはじめた私も今では60歳。それだけ長く続けられること自体、魅力にあふれた競技だということですよね」

パラ競技にも魅せられた東京大会

山本さんはオリンピックに5回出場。銀と銅とふたつのメダルを手にしています。
「はじめてオリンピックに出場したロサンゼルス大会の印象は強烈ですね。とくに開会式。スタジアムにびっしりと人がいて、とにかく熱気がすごい!演出のすべてに迫力があって驚きました。選手村でもいろんな料理が出されてね。競技以外でも存分に楽しめて、これがオリンピックなんだ!と何を見ても興奮していました」
東京2020オリンピック・パラリンピックでは競技委員会顧問として運営にも携わることに。
「アーチェリーでは日本男子団体が初の銅メダルを獲得したことは嬉しかったですね。団体ともなれば、感じるプレッシャーは相当なもの。その重圧に耐えてのメダルですから、闘った選手たちはよく頑張ったと思います。それから、パラリンピック競技をじっくりと観ることができたのも自国開催だからこそ。車いすバスケットボールでは、巧みな車いすさばきや接触による転倒もものともせずに起き上がってプレーを続行する選手たちのたくましさに感動しました。あのときの熱気が冷めやらぬ東京に、これからまた多くの方がスポーツ観戦に来て頂けたら嬉しいです」

安全に快適に短時間で幅広く楽しめる都市

山本さんから見た東京の魅力はどんなところにあるのでしょう。
「東京はおよそ1400万人が暮らす過密都市でありながら、交通網が発達していて利便性が高いところがいちばんの魅力だと思います。電車や地下鉄、バスなど公共交通機関が充実していて、しかも、どの路線も数分単位で運行し、ほぼ時刻表通り。いくつもある交通機関のなかで、観光にも使える便利な路線といえば都心部で環状運転をしている山手線。1周34.5kmを約1時間かけて走行する路線内には新宿、渋谷、銀座、秋葉原など観光地としても人気の駅があります。30ある駅は、降りるごとにまったく違う街の雰囲気を味わえるのが東京の面白いところ。そして、駅前には天ぷらや寿司、そば、ラーメンなど代表的な日本食をリーズナブルに楽しめるチェーン店があるのも嬉しいポイント。待たずに安く、美味しく食べられるので外国からいらした方にもおすすめです」
気軽にスポーツを楽しむ場所にも事欠かないのも東京のよさ。
「スポーツを観て楽しむなら、日本の国技でもある相撲はいかがでしょう。開催している時期は限られていますが、ぜひ一度は両国国技館で相撲観戦を楽しんで頂きたいです。自分が身体を動かしたいのであれば、都心から約1時間で行ける標高599mの高尾山がおすすめです。四季折々の自然に触れながら登り、着いた山頂から臨む景色は圧巻。私も毎年、教え子たちと一緒にゴミ拾いをしながら高尾山登山を楽しんでます。東京はコンパクトでありながら観光もスポーツも食も、安全に快適に短時間で堪能できる貴重な都市だと思います。東京での時短旅行をぜひ楽しんでください」

<プロフィール>
YAMAMOTO Hiroshi
1962年、神奈川県出身。中学校1年からアーチェリーを始める。学生時代はインターハイ3 連覇、インカレ4 連覇。日本体育大学在学中にロサンゼルス五輪で銅メダルを獲得。2004年開催のアテネ五輪ではロサンゼルスから20年ぶりに銀メダルを獲得。オリンピックは5大会に出場。現在も現役選手として活躍する他、日本体育大学教授 博士(医学)、東京都体育協会会長、東京2020オリンピック・パラリンピック競技委員会顧問会議顧問などで活躍。